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【統一日報掲載】3・1(朝鮮独立)運動100周年に寄せて

 

 北朝鮮難民救援基金・副理事長 田平 啓剛

 

 過去半年、「国際観艦式」での海上自衛隊旗の掲揚問題から、韓国国会議長の天皇謝罪発言問題まで、もつれた日韓関係の悪化が止まらない。これに反比例するかのような、文在寅政権の志向する南北融和は、またその先にある南北平和統一それ自体は、朝鮮半島の74年に及ぶ分断の歴史に鑑みる時、民族的悲願として当然のことかもしれない。

しかしながら、文政権の余りにもの北朝鮮(以下、「北」と略称)寄りの姿勢、急激な親「北」政策路線は、トランプ米大統領の唱道する「米国第一主義」とも相まって、不安・不審の種であり心配が尽きない。経済的に豊かな韓国が、思想的に優勢な「北」に結局は飲み込まれてしまうのではないか。韓国の自由で民主的な社会が、いよいよ独裁の度を強める習近平・中国やプーチン・ロシアの後ろ盾をも得て、「北」の独裁・軍事・秘密警察体制下の奴隷社会に貶められてしまうのではないのか。例え米朝首脳会談を繰り返そうが、全面的な非核化、(米国にまで達する大陸間弾道ミサイルの開発中止や廃棄には応じようとも)中短距離ミサイルの放棄には決して応じることのない「北」が、経済規模(GDP)世界第11位の韓国と統合される時、東アジアの新たな大いなる不安定要素として、既に強引な海洋進出を隠さない中国と共に、更に世界秩序を攪乱し、脅かすことになるのではないのか。

 

2014年3月17日、人権に関する国連調査委員会(COI)は、国連人権理事会に対して、「北」において「深刻で広範、かつ組織的な人権侵害が現に行われている」とする最終報告書を提出。同人権理事会並びに同総会がこれを承認した。16年12月19日、第71回同総会本会議は、更に一歩を進め、国際社会の総意として、「北」の人権状況をオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に付託し、人権侵害の最高責任者(金正恩・朝鮮労働党委員長)を「人道に対する罪」で処罰するよう、(強制力を持つ)国連安全保障理事会に勧告する決議案を最終採択したのである。

 

他方、既に3万人を優に超えた在韓脱北者の諸々の証言により、前世紀のナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅収容所にも匹敵する「北」の政治犯強制収容所の悍ましい惨状が、世界中にあまねく伝えられている。反政府的行動を敢行した者は勿論、政権に対する批判的言辞を弄した者、その兆候を示しただけの者、更にこれらの者の上下3世代に及ぶ血縁者達まで、(直ちに処刑されなかったとしても)全財産没収の上、根こそぎ収容所送りとなるのである。父母や祖父母、子や孫に至る後難を懼れ、勇気ある行動に立ち上がれない正義の人士が「北」には無数にいる。そして、これを長年、可能としてきたのが、「子が親を売り、親もまた子を売る」全土に張り巡らされた密告制度であり、この土台となる「金日成、金正日、金正恩の三代世襲一族が、自分の親よりも尊い」とする幼児期からの洗脳教育である。この為、山間僻地に秘匿される全国に数ヵ所の政治犯収容所のみならず、「北」全土が冷たく凍える監獄同然の社会と化しているのである。

 

祖国日本は朝鮮半島の分断という歴史に深く関わり、朝鮮戦争という朝鮮の民族的悲劇を踏み台にして、太平洋戦争の灰燼から不死鳥のように蘇った。その日本国民のひとりとして、脱北者を始め、朝鮮半島出身の人々の幸福増進に微力を尽くすのは当然のことである。のみならず、むしろ日本国家は国家の総力を挙げて、「内政不干渉」という国際法の旧枠組みを乗り越え、「北」の監獄社会、奴隷社会を解き放ち、「自由人権と法の支配のないところには、人類の名において、これを確立する」という人類社会発展の歴史の負託に応えなければならない、とさえ、私は考えている。これこそが、「朝鮮半島分断の歴史に道義的責任を負う」次世代の日本国家と日本国民の責任の取り方ではないのか?

少なくとも個々人の民衆レベルでは、歴史の恩讐を超え、我々は既に「良き隣人」であり、「隣の兄弟姉妹」である。お互いに正面から向き合い、正視し合って、譲るべきは潔く譲り、主張するべきは穏やかに主張する! その先に、必ず、必ず光が見えて来る!

3・1運動100周年の2019年3月1日、「北」に自由と人権を!と標榜する自由朝鮮臨時政府(旧・千里馬民防衛)が樹立宣言をした。この団体が「北」の民主化と人々の幸福実現の為に本当に寄与し得るのか、その真贋を見極め、連帯し、何時の日か、朝鮮民族と日本民族との歴史的和解という至高の瞬間を見届けたい。

 

 

田平啓剛 早大卒業後、法務省入省。法務・外務本省、地方入管局などを経て、現在NPO法人「北朝鮮難民救援基金」副理事長。

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