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【News127】北朝鮮派遣労働者スト、集団暴動報道 「殺されると知っていて、あり得ない」と韓国の知人脱北者たち 水府

 1月19日、産経新聞は元北朝鮮外交官(現統相特別補佐役)の高英煥氏が産経新聞に寄せた衝撃的な報告書内容を最初に報道した。その後の複数の内外報道を総合すると、この暴動は北朝鮮から中国吉林省和龍市にある北朝鮮国防省傘下の戦勝貿易所属会社に派遣された工場労働者が、2020年以降からの賃金不払いの不満から複数の工場(縫製、水産物加工)で11日から15日にかけて約2000人規模で就業拒否し、幹部を人質に取り、工場の機械を破損するなどの暴動を起こし、少なくとも1人の北朝鮮政府関係者が死亡し、支配人など他の3人が重傷を負ったという。加害者の中には20代の前職女性兵士も多数含まれていたという。

 

金指導部「重大事件」に指定 主導者を本国送還

 金正恩指導部はこれを「特大型事件」に指定し、駐瀋陽領事館や秘密警察の国家保衛省の要員を急派し、賃金の即時支払などを約束して暴動を収拾した。1月末には検閲団を派遣して調査を行い、戦勝貿易に所属する代表者や暴動主導者ら約200人を探し出して大半を丹東から本国送還したという。その後、処刑や政治犯収容所送りなどの厳罰を受けただろう。北朝鮮と中国は影響拡大を警戒して情報統制し、この噂の拡散を防いでおり、この件に関したいかなる報道もしていない。

 

 

丹東でもアフリカでも騒動が発生 

 韓国統一研究院の趙漢凡専任研究委員は2月28日、自身のYouTube「大同江TV」で、中国遼寧省丹東の縫製工場でも「数十人の北朝鮮労働者が故郷への送還を求めて、2月中旬から出勤を拒否している」と述べ、丹東でも北朝鮮労働者が騒乱を起こしたことが分かった。趙委員は「騒動が発生した直後に北朝鮮領事が派遣されて収拾中だが、難航している」とし、「労働者が『死ぬとしても家に帰って死ぬ』という頑なな立場を示している」と伝えた。背景について趙委員は、中国の北朝鮮労働者は最大7年間の長期滞在中で、身体的・精神的限界の状況に置かれていると主張した。これについて国家情報院はこの日、「北朝鮮労働者の劣悪な生活条件により多様な事件・事故が発生しており、関連事案を注視中」と発表した。

 米国のNPO「アウトロー・オーシャン・プロジェクト」は昨年、中国人調査員を雇って丹東で働く派遣労働者20人と面談させ、調査内容を米国に送った。丹東の水産物工場で働く北朝鮮のある女性労働者は、毎日「早くしろ、ばか、間抜け」と罵倒されるという。女性労働者は1日18時間、狭い空間でアサリを剥く。ぐずぐずしていたら、北朝鮮当局が派遣した監視要員に殴られた。別の労働者は「工場管理者らが性関係を強要し、拒みきれなかった労働者が自殺したという噂も広まっている」と語ったそうだ。

 

海外派遣労働者に広まる「集団行動」の噂話

 アフリカのコンゴ共和国でも、建設現場に派遣された北朝鮮労働者数十人が、2月に予定されていた帰国の先延ばしに反発して暴動を起こした。これについて韓国統一部は、北朝鮮内部情報筋を引用した報告書で「コンゴの建設現場での集団行動も、北朝鮮当局が30歳以下の海外派遣労働者全員を帰国させるよう指針を下したが、現場責任者が外貨稼ぎなどを理由にこれを履行しなかったため労働者が反発して生じた」と伝えた。また「1月に中国で発生した事件以降、北朝鮮当局が情報を統制しているが、中国やロシアなど10万人以上の海外派遣北朝鮮労働者の間の集団行動に関する噂はむしろ広まっているとみられる」と指摘した。

 

 

賃金の6割強が収奪され奴隷のようだ

 海外派遣北朝鮮労働者は現在の金正恩体制の北朝鮮において比較的恵まれた家庭の出身だが、500から2,000ドルの裏金を労働党幹部や派遣事業体幹部に渡し、10ヶ月から1年超の身元調査や思想教育目的の講習を受ける必要があるという。派遣されても、工場や建設現場で一日15時間以上の単純労働を強いられ、休暇はほとんどない。賃金の6割以上を北朝鮮側幹部が中抜きし、金正恩への「忠誠資金」や寮費、食費を控除されると労働者の取り分は月200から300ドル程度で現代版の奴隷のようだという。

 

30歳以下海外派遣労働者の全員帰国命令

 吉林省の工場で大規模暴動を主導したのは、20から40代の「苦難の行軍」を経験した若い世代だったという。90年代後半、大飢饉後で配給制が崩れ、拝金主義が強まった。韓国ドラマや外国文化の流入によって日常的に韓流社会の価値観に傾斜、北朝鮮体制に疑問と不満を持つと同時に、外国に憧れを持って接してきた世代である、いわゆる「チャンマダン世代」であり、金王朝に対する忠誠心は大幅に変質している。

 今回、北朝鮮当局は困惑して「30歳以下海外派遣労働者の全員帰国」という強力な指針を出した。

 

 

 

 

 

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