国全体を「収容所化」している北朝鮮。幼少時から洗脳教育を受けている北朝鮮住民の人権改善には、住民の意識変革が必要です。そのためには、正しい外部情報提供が必要です。
しかし金正恩政権は、外部情報を完全に遮断し、住民を「井の中の蛙」状態に置くべく「反動思想文化排撃法」「青年教養保障法」「平壌文化語保護法」など各種法律を制定し、外部情報に接した人々には公開処刑を含む厳罰で対処している。
また、祖父金日成、父金正日が掲げた「祖国統一」路線を否定し、南北関係は敵対関係と規定し、統一に関した教科書の記載を墨で塗りつぶし、国歌の歌詞まで変えている。こうした状況下で、正しい情報を安全に送り込む必要性があると判断し、対北ビラ計画をスタートさせました。
◇空から・李民馥対北風船団長
南北間では朝鮮戦争休戦後もビラの飛ばし合いをしてきた。1990年時点で韓国陸軍には10のビラ飛ばし基地があったそうだ。韓国で最初に民間次元で風船ビラ飛ばしを初めた李民馥(イ・ミンボク)風船団長は90年8月、農作物研究で江原道鐵原出張時に偶然ビラを見たそうだ。朝鮮戦争は北朝鮮の南侵で始まったという、北の教育と正反対の記述に大きな疑問を抱き、同年11月に脱北したが捕まって送還された。3ヶ月の取調べを受けた後、91年に再び脱北し、ロシアを経て95年韓国に入国した。
彼は「統一のためには北朝鮮住民の思想を変えてやるのが核心」であり、最善の方法は風船ビラと結論。03年に市販のゴム風船で20枚程度のビラを飛ばした。風船の研究開発の末05年に大型風船を完成した。高度3~5千m、荷重3.5Kg(ビラ3万枚)、分離用タイマーを装備している。気象条件により平壌や吉林省まで飛ぶが、大部分は黄海道、江原道に落下するそうだ。年平均1500個の風船を飛ばしている。韓国では50余の対北風船ビラ団体があるそうだが、法的資格と装備を有するのは李民馥氏だけである。
◇海から・朴チョンオ氏、鄭光日氏
ペット瓶に米やUSBを入れて潮流に乗せて北に放流する活動は2015年7月に、クンセム(大きな泉)朴チョンオ氏によって始まった。動機は「黄海道の住民が飢えて死んでいる」という話を聞いたことだ。脱北した漁民や軍人、海洋科学研究院などから話を聞き、海流を利用して北側にペット瓶が届くことを確認した。16年には、No Chainの鄭光日(チョン・グァンイル)氏が合流した。ペット瓶なら風船で送れない米が送れる。2Lのペット瓶には米1Kg、各種情報を入れたUSB、聖書、コロナ流行時は鎮痛剤やマスクなども放流している。風船は風向きに左右されるが、ペット瓶は潮流が問題である。旧暦の1日と15日の月2回、年中できる。(表紙写真を参照)
基金の対北ビラも空から、海から北の住民に届くだろう。