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【News126】「どう対応する 国家権力と公職者による人権侵害 政府から独立した人権機関の設置が不可避」 加藤 博

国連自由権規約委員会が日本に勧告

 2022年の定期審査を踏まえた日本への勧告を公表した。勧告によれば2017年から2021年までの5年間で入管施設に収容された3人が死亡している事実を指摘している。

3人のうちの一人は名古屋入管で死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん。英語教師を夢見てスリランカから来日したが、学校に通えなくなり、在留資格を失ってしまう。2020年8月名古屋入管に収容された。同居していたパートナーからのDVとその男性から収容施設に届いた手紙に「帰国したら罰を与える」との身の危険を感じる脅迫があり、帰国できないと訴えていた。体調不良に陥り、最後には呼びかけに反応できないほど衰弱していたにもかかわらず、十分な医療を受けられず死亡した。

 

遺族は居室の監視カメラの映像開示を要求

「多くの人の目で検証して欲しい」と訴えたが、国側は消極的な態度で一貫し,公表を渋った。結果、名古屋入管側の関係者は不起訴となった。

 遺族はどれほど憤怒の涙を流したか想像に難くない。

 これだけの事件を起こして関係者が処罰も受けずに身分が保証されるなど信じ難いのだが、名古屋入管局長を始め幹部たちは栄転していくだろう。

 もし、今後もこのような人権侵害が起こることになれば、この国の入管行政は笑いものになる。世界からの信用は、がた落ちだ。それなのに、再発をどう防ぐのか国民の前には明示しない。ただ非難の嵐が過ぎさるのを待っているがごとくに見える。

 事態に迅速に対応していくためには、政府から独立した権限を付与された人権委員会などの設立が欠かせない。

 

杉田水脈議員による人権侵害、人権侵犯

「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」などとマイノリティやアイヌ文化を揶揄することで世間の注目を浴びているのは、自由民主党の衆議院議員の杉田水脈女性局長だ。「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」とブログに投稿する人だ。

 投稿についてアイヌの女性は2023年3月、札幌法務局に人権救済を求める申し立てを行った。9月7日付けで札幌法務局は「侵犯の事実があった」と認定し、杉田議員にアイヌ文化を学び、発言に注意するよう啓発を行ったという。

 この人はこの頁には書ききれないほどたくさんのマイノリティに矛先を向けた問題発言がある。

2018年8月号の『新潮45』に同性カップルを念頭に「生産性がない」と寄稿した。2020年9月自民党の合同部会ででは女性への性暴力に関して「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言している。

 岸田首相は2022年、杉田議員を総務政務官に起用して非難を浴びた。そしてなぜかさしたる説明もないまま国会を閉じた年末に交代させている。

 ヘイトや差別を何度も注意されても繰り返す人物を政権の要職に起用する感覚は保守政党の悪癖なのか。あきれてものも言えない。何時までも有権者を欺き続けるのは難しい。差別、ヘイトスピーチなどは考えるに値しないというメッセージを社会に向けて発信していると受け取られる。

 2023年9月国連総会で岸田首相は「人間の尊厳に光」と演説していたが、「言うだけただ」という言葉が伝わってくる。

 札幌法務局の判断は貴重なものだが、法務省の出先機関の話。深刻なのは入管内で起きた事件は、法務省の責任が問われる問題だからだ。公権力や国会議員、公職者による差別、人権侵害により適切に対応していくためには、どうしても政府から独立した、権限のある「人権機関」の設置が必要不可欠だろう。

 

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