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翻訳ボランティア参加は私の名誉

当基金の英語ウェブサイト用に、日ごろ記事などを英語に翻訳してもらっているボランティアの M.M さん(日系米国人)。優れた翻訳能力を持つ彼女に、なぜ翻訳ボランティアに参加するに至っ たのか、その動機と経緯を書いていただきました。(編集部)

ずっと受信箱に残しておいたメール
2010年8月、「日本語から英語への翻訳 ボランティア募集」との一文が添えてあった北 朝鮮難民救援基金の英語メールが私の弟のク ラスメート(韓国系米国人)に届きました。こ のクラスメートがそのメールを私の弟に転送 し、弟がさらに私に転送してきました。

このメールを読んで私は基金の英語ウェブ サイトを見てみたのですが、これまで聞いたこともなかった日本の NGO の活動内容にすっかり感心してしまいました。とはいえ、まだ二人の子供に手がかかる上に、大学での教師としての仕事もあるので、翻訳ボランティアまでやる 余裕はとても無いと諦めざるを得ませんでした。でも、なぜかこのメールを削除する気にはなれず、ずっと受信箱に残しておいたのです。

メールが行動をすべきだと私に呼びかける
翌年、私は大学で東アジア政治学を教えたのですが、学生たちは、この地球上に北朝鮮ほど 酷い暴政独裁国家が実在することにショックを受けたようでした。学生と共に私も北朝鮮についてさらに学ぶうちに、私のメール受信箱に残っているあのメールのことを考えました。そして、北朝鮮の惨状をただ読んだり話したりす るだけではなく、どんな些細なことでもよいか ら何らかの行動をすべきだとそのメールが私 に呼びかけているような気がしたのです。

そこで、大学での仕事が一段落した時に、ほぼ一年前に届いたメールを受信箱から引っ張り出して、基金の加藤理事長宛に「翻訳ボランティア」を希望する旨のメールを出しました。 その日のうちに返事がきて、早速の基金ニュースの記事翻訳を始めることになりました。

日本女子大とフルブライト留学で日本語強化

私は決してプロの翻訳家ではありません。私は米国で育ちましたが、日本人である私の母は、自分の子供たちが必ず日本語も学ぶように指 導したこともあり、私は大学生の時に、祖母と母が通った日本女子大学へ 1 年間留学し、大学 院では「日本における女性運動」に関する博士 論文を書きました。さらにフルブライト奨学金で 1 年半、日本に滞在しました。

日本語の勉強はしたので、日本語を読むことはできましたが、翻訳というのは全く異なる能力が必要とされ、まさに初の挑戦でした。しかし、この翻訳ボランティアを通じて、日 本に定着した脱北者の人たちの様子を知るこ とができたのは、私にとって最大の収穫でした。 私が翻訳した基金ニュース記事は、脱北者自身 が書いたものでしたが、彼らが北朝鮮で耐え忍 んだ苦境、そしてその人たちが日本定着後に達 成した事柄に対して畏敬の念に打たれました。

私が翻訳した記事には、日本入国時には全く 日本語を話せなかった脱北者が、3年で日本語検定試験1級に合格したこと、また、日本定着 後わずか 5 年で狭き門である看護専門学校の入学試験に合格した脱北者の記事もありました。最近翻訳した記事には、日本定着後に生計を立てるために必死に努力し、現在は韓国旅行者向けのゲストハウス経営で大成功している 脱北一家のことが書かれていました。

関係改善してゆく歩みを進めることは可能
私からアジア政治学を学ぶ学生たちは、朝鮮 と日本との関係、つまり、かつて朝鮮が日本の植民地であったこと、第二次世界大戦、慰安婦 問題、そしてこの悲劇的な歴史のゆえに現在も日本と朝鮮との緊張関係が続いていることな どを知ります。このような歴史を考えると、北朝鮮難民が新たな人生を築く上で、日本のこの小さな NGO(北朝鮮難民救援基金)が彼らを 手助けしている姿にとても感動します。

過去を消すことはできませんが、今後、関係 を改善してゆく確かな歩みを進めることは可 能です。その点で、北朝鮮難民救援基金は正しい方向に向かっています。そして私は微力なが らもこの活動に参加していることを名誉に思っています。

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