韓半島には事実上二つの国家があり軍が対峙している。
かつては両国とも、軍入隊を青年の神聖な義務と考える人々が多かったが、次第に、軍に
行きたくないという人々が増えている。
韓国は徴兵制で、男子満 18 歳で徴兵検査対象になり満 19 歳までに兵役の判定(1 級~6 級)を
受ける。脱北者と身長が 140cm 以下の者などは免除される。服務期間は 21~24 ヶ月であり、ほ
とんどが陸軍に配置される。海軍と空軍は志願しなければ配置されない。
北朝鮮は名ばかりの志願制を取っていたが、1990 年代の「苦難の行軍」の影響で新兵対象者が
減り、2002 年に徴兵制に変へて女子も含めた。中学卒業後に軍事動員部から徴集の通知がくる。
成分の悪い者や身長 142cm 未満の者は除外される。服務期間は男子 11 年、女子 7 年であり、配
置先は親の政治経済能力に影響される。
韓国では入隊後、私物は没収され衣類は支給される。月給は 16 万 2800 ウォン(二等兵)~21
万 6800 ウォン(兵長)で、来年からはアップされ、兵長の場合 40 万 5669 ウォンになる。陸軍
の食費は、一日一人三食で 6848 ウォン、3227Kcal である。兵舎では、多くの場合 40 人
部屋での共同生活である。
北朝鮮でも衣類は支給されるが、軍事訓練よりも建設や農業に無給で動員されることが多く、加
えて食糧不足のために栄養失調に罹る兵士が多い。
韓国でも北朝鮮でも兵役を嫌うのは同じで、それを免れようと様々な策を使っている。偽の診断
書提出、全身入れ墨、自損傷害、賄賂などである。
韓国では軍隊内でのケガ、「気合(キハプ)」入れ、そして「いじめ」が原因での新兵による同僚に
対する乱射殺害などの事件や不良武器による事故が起きている。中央日報によれば自殺も含めて平
時でも 4 日に 1 人死者が出ているという。そのため、徴兵された息子を気遣う親が増え、韓国軍は
「国防幼稚園」になったという嘆きが韓国民の間に広がっているという。朝鮮日報などによれば、冬
山登山訓練でケガをした新兵の母親は「冬に山登り訓練なんかあり得ない。お母さんが中隊長に話
をします。」と息巻いたという。また「先輩兵士に息子がいじめられていないか見張ってほしい」と
頼んだり、夕食のメニューを問い合わせたり、部隊駐屯地の近くに引っ越してくる親もいるという。
ある父親は、息子の 30Km 行軍訓練に車で同行し、休息時間に息子におやつを渡しながら付いて
回ったという。
軍隊では陸軍工兵大隊の指揮官が、地雷を除去する作業に投入する兵士の親から事前
に同意書を受け取っていた。朝鮮日報は「韓国軍兵士は親の同意がないと戦争に行けないのか」との
社説を掲載。中央日報は事前同意について「ボーイスカウトになってしまった韓国軍」と報道。東亜日
報は「新兵が訓練所に入所すれば、指揮官と親のチャットが開設され、母親の問合せや要求で指揮官
の業務が妨害を受けている」と言及している。こうした母親は、ヘリコプターで旋回しつつ監視する
イメージから「ヘリママ」と呼ばれているという。
北朝鮮では、ミサイル部隊や DMZ 付近の砲兵部隊などの特定の部隊兵士は優遇されているが、
大部分の部隊では慢性的食糧不足状態で、腹を空かせた兵士が住民の食糧や金目の物を強奪する事
件が発生している。上官が女性兵士に性暴力をふるう事件も起き、準軍事組織の労農赤衛軍では、
女性部隊による組織的売春が発覚したという。