朝鮮日報日本語版 2018.10.03 ワシントン=趙儀俊特派員 , 金ミョンソン記者
米国の複数の人権団体が1日(現地時間)「韓国政府は北朝鮮の人権問題から目を背けているだ
けでなく、脱北者による人権関連の活動まで弾圧している」と主張した。韓国国内の北朝鮮人権
団体も「現政権が発足してからは北朝鮮の人権問題を取り上げること自体がタブーになったよう
な雰囲気だ」として不満を表明している。
米国の人権団体「人権財団(HRF)」で戦略企画室長を務めるアレックス・グラッドスタイン
氏はこの日、米国の政府系ラジオ放送局「自由アジア(RFA)」とのインタビューで「韓国政府
は北朝鮮の人権問題よりも独裁者である金正恩朝鮮労働党委員長との関係改善をより重視したい
と考えている。これは韓国政府関係者と実際に会ってみて分かった」とした上で「韓国政府は北
朝鮮の人権問題から顔を背けているだけでなく、脱北者による活動を弾圧している。これは悲劇
であり衝撃だ」と述べた。
また別の民間の人権団体「北朝鮮人権委員会(HRNK)」のグレッグ・スカラチュー事務総長も
RFAに対し「韓国では北朝鮮の人権活動家が検閲や制裁を受けており、活動に必要な予算が削減
されるなど、ほとんど声を出せない状況が続いている。これは非常に遺憾なことだ」「韓国政府
の対北朝鮮政策がこうなることはある程度予想はしていたが、ここまで深刻とは思わなかった」
などと指摘した。別の北朝鮮人権団体からは「政府による資金援助や企業からの寄付金も途絶え
、検察からは標的捜査を受けている」との不満も聞かれた。
北朝鮮人権団体連合の朴相学常任代表は2日「昨年までは韓国統一部(省)の北朝鮮人権課から
北朝鮮自由週間に行うイベント開催のための資金援助を受けていたが、今年は全く受けられなく
なった」と明らかにした。さらに北朝鮮戦略センターの姜哲煥代表は「前政権では、脱北者団体
は政府からの資金援助によって北朝鮮の人権問題を訴える活動を続けてきた。ところが今では検
察から捜査を受けている」と嘆いた。
ウォールストリート・ジャーナルにはスカラチュー氏の「ソウルは暗黙的に平壌の残酷さを支
持している」と題された寄稿が掲載された。スカラチュー氏は寄稿の中で「文在寅政権は北朝鮮
人権団体に対する資金援助の90%以上を減らし、非武装地帯では北朝鮮に対する宣伝放送を中止
させ、北朝鮮に送られるUSBメモリーの内容を検閲している」と指摘した。
HRFはベネズエラ人映画プロデューサーのトール・ハルボルセン(Thor Halvorssen)氏が2005
年に設立した団体で、ニューヨークに本部を置いて全世界で人権関連の活動を行っている。HRF
が2009年から毎年ノルウェーのオスロで開催している自由フォーラムは北朝鮮の人権問題はもち
ろん、中国、ロシア、キューバ、ベネズエラなど全世界の人権問題も取り扱っている。
HRFは今年初めてアジアで自由フォーラムを開催するため韓国政府や台湾政府と交渉を行った
が、北朝鮮の人権問題に対する韓国政府の煮え切らない態度に大きく失望したという。グラッド
スタイン氏はRFAの取材に対し「台湾政府はフォーラムを積極的に後押しし、金銭面での支援も
してくれる」と明らかにした。最終的にフォーラムは来月10日に台湾で開催されることになった
。
韓国で北朝鮮人権活動を続けている脱北者団体や市民団体は、文在寅政権が北朝鮮の人権問題
を訴える活動を弾圧しているとの主張について「そのほとんどは事実だ」と明言した。北朝鮮人
権市民連合が脱北した若者を支援するため毎年行ってきた「ビューティフル・ドリーム・コンサ
ート」も、現政権が発足すると突然開催できなくなった。同連合で幹事を務めるキム・ソヒ氏に
よると、これまで何らかのイベントを行うたびに100万ウォン(約10万円)ずつ支援してくれた複
数の企業が、政権交代後は突然「支援できない」と言ってきたという。キム氏は「われわれを支
援してくれた企業が(捜査機関から)捜査を受けているという話を後から聞いた」と明らかにし
た。
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