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金順姫さんによる北朝鮮の教育を受ける権利についての証言

 2019年12月13日、北朝鮮人権啓発週間のNGOと「北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟」の共催で行われた国際会議で発表された当基金のメンバーの金順姫(キム・スンヒ)さんが、北朝鮮の教育を受ける権利がいかに侵害されているか証言をしています。その内容を掲載致します。

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 まず先に北朝鮮には私の家族全員が残されているため、実名や特定される場所、家族につ いての発言を控えることをご了承ください。私は北朝鮮の地方の都市で生まれました。両親ともに日本の生まれで小学生と中学生の頃、両親とともに北朝鮮に渡ったと聞いております。2人は大学で出会い結婚しました。大学卒業後、お父さんは感染症の予防や防止をする医 療機関で働いており、お母さんは家庭にいました。

 

 日本に父側の親戚がいて仕送りをしてくれたので、地域では割と裕福な生活をしていました。私は高校を卒業して平壌の大学で勉強を始めましたが、4 年生で大学を中退して脱北することになりました。脱北した理由は山ほどありますが、時間の関係上、教育に関する内容だけを報告いたします。

 

 北朝鮮では朝鮮労働党が決めたことは命を失うことがあっても必ず守らなければなりま せん。ここで朝鮮労働党は金一家だと考えてください。分かりやすい例として虫垂炎の子供がマスゲームの練習のため病院にいけず、亡くなりました。その時、その子の意思で党の方針に従って亡くなるまで練習したと英雄として仕立 て上げ、しばらく宣伝材料と使いました。また、党が決めたことを逆らうとひどい目に遭うといことを幼い時からしっかり教わります。

 

 いくつか例をあげます。まず、小学校、中学校、高校では資源を提出しなければなりません。毎年、紙類、布、ビニール、ガラスやガラス瓶、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛など強制的に一定量を提出しなければなりません。例えば、古紙を一人当たり小学生は2kg、中学生は5kgなどと決まっていて、期限内に提出しなければなりません。日本は本屋には本が溢れるほどたくさん販売されて、郵便箱 には毎日広告のチラシはたくさん入っており紙類の資源は溢れるほどあります。

 

 しかし北朝鮮は違います。広告チラシなどは一切ありませんし、書籍というもののほとんどが金日成や金正日が書いたものが多く、これらを古紙として出せません。新聞というのは一般の人は取れません。取れるとしても金一家の写真が載っているものはもちろん古紙として出せません。そのため、古紙数キロを出すことはとても大きい負担になります。期限が近づくにつれ提出していない子はクラスや学校の生徒の前で名前を呼ばれ、怒られ、最終的には授業にも参加させてもらえません。

 

 そのため、子供が多い家庭は大変です。家にある紙類は全て持って行かれます。それでも足りなくて、市場で古紙を買います。資源を出す時期が来ると市場でいろんなものがごっそり売られています。このように資源を提出しても、新学期にはボロボロになった古い教科書や質の悪いノートも十分にありません。毎年30人くらいのクラスに、例えば数学の教科書は5冊、国語は7冊など先輩からの下りものが配られます。それを古紙の目標を達成した子は優先的に教科書を多めにもらって、達成できない子はもらえません。古紙 2~3 キロを提出してもノー トは数冊しかもらえません。

 

 生徒が提出しなければいけないのは資源だけではありません。毎年、ウサギの皮も 1 人あ たり1枚ずつ出さなければなりません。軍隊の冬の帽子や手袋などの防寒具に使われます。 ウサギの皮を取るため、早い時期から子ウサギを飼う人や、提出する時期が来ると市場で 売っているので購入して提出したりします。

 

 北朝鮮は無料教育をうたっていますが、これが無料教育でしょうか。あまりにも困るので 「これなら学費を払ったほうがいい」とごっそり本音を漏らす人もいました。また、中学 3 年の頃から強制労働を強いられます。春は1ヶ月から1が月半ほど田植えの 手伝いにいき、秋になると1ヶ月ほどの稲刈りに行きます。全て授業を中断して食料を持 って泊まり込みで行きます。冬の燃料も自分たちで解決しなければならないため、薪を集 めに山に行くので2週間ほど授業を休みます。その他、夏休み、冬休みがあり、授業の4 割以上が金一家の授業であるため数学や国語、英語などの必要な科目は予定より遅れたり して、終わらないまま学年が終了することも多々あります。

 

 さらに、好きな洋服や音楽や映画、雑誌などレクリエーションまでも党が許可した内容のものしか楽しめません。映画の例を挙げると、種類が少ない国内ものか、外国映画といったらソ連時代のもの、中 国の毛沢東時代ものしかなく、チャンネルが一つしかないテレビでは同じ映画が何百回繰り返して流れます。映画撮影所も政府が管理していますが、資金の問題で新しい映画は年 に一つ作るか作らないかです。 平壌の大学に行くと少し状況が変わると期待しました。しかし、さらに息苦しい生活が待 っていました。実技の勉強は二の次で、哲学や専門書までも金日成や金正日が書いたものでした。

 

 また、国のいろいろな記念日に合わせた行事に学生を動員させることも多く、私も党創立 記念日の行事に参加しました。マスゲームではなかったのですが、金日成広場の約 200m を 踊りながら渡るものでしたが、1 年近く練習しました。行事が行われる 23 ヶ月前には授 業も中断して練習しました。私は何をするために大学に来たのかと正直思いました。

 

 大学卒業後の就職ももちろん個人の希望など通りません。党が決めることに従うしかあり ません。平壌の出身の人たちは、人脈があり賄賂を使って希望の部署に行けることもあり ますが、地方から来た私には党の発令を待つしかありませんでした。クラスで地方出身は 私しかいませんでした。

 

 大学4 年が始まった頃、みんなが行きたがらない就職先に私が行くかもしれないという噂が流れてきました。分かってはいましたが、現実を突きつけられた瞬間、この国では私の 未来や夢は期待できないと改めて思い知りました。そして、4 年の2ヶ月で大学を中退し、 脱北を決めました。ここまでが、私が脱北を決意した経緯となります。

 

 最後に、今回、ここに立ったのは、北朝鮮の人権について証言することと、もう一つ皆様 にぜひ知っていただきたいことがあるからです。先月、韓国で、脱北者2名を北朝鮮に強制送還するという事件が起こりました。日本のメディアなどではほとんど取り上げられることがないため、少し時間は立ちましたが、ここで報告いたします。

 

 2019 11 2 日、韓国政府は北朝鮮から脱北してきた漁師 2 人を北朝鮮に強制送還したと発表しました。 強制送還した理由として、漁に出た際に船長に不満を持った 2人の漁師ともう1人が共謀 して、船長を含む同僚 16 人を次々と殺害したことをあげています。これらの内容はとても辻褄が合わず、不可解な部分が多くあります。しかし韓国政府は真実をしっかり明らかにすることはせず、だった 5 日という短い期間の取り調べだけで強制送還を実行しました。

 

 これは明確に韓国憲法に違反した上、彼らの人権を無視した行為であります。漁師2 人を取り調べる際に弁護士の立会いもなく、裁判を行うこともせず、本人の意思に関係なく、目がかくししたまま板門店に連れて行かれたとのことです。目隠しを外し、目 の前に北朝鮮の兵士が見えた時、2 人はその場に崩れ落ちたそうです。

 

 この 2 人の漁師が強制送還後、どのような扱いを受けるか、皆様はご想像がつきますでし ょうか。おそらく弁明される余地もなく残虐に殺されるでしょう。今回の一件をうけて、在韓の脱北者に向けていつでも強制送還をすることができる、北朝鮮から新たに脱北しようとする人々に向けてもう韓国に来ないように、というメッセージ を送っているように感じました。韓国政府はもっと真実を明らかにするべきであり、今後、このようなことは起こってはならないと思います。

以上、報告を終了いたします。

 

 

 

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