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【News118】北朝鮮政府相手の訴訟で10月にも弁論へ 総額5億円の損害賠償を請求!人権侵害の実態を赤裸々に  北朝鮮難民救援基金理事長 加藤 博

 北朝鮮を命がけで脱出し、日本に戻った脱北者5人が、北朝鮮政府を相手取って総額5億円の損害賠償請求訴訟を起こし、その口頭弁論が10月14日頃にも東京地裁で行われることが明らかになった。

 

9万3千人が帰還事業で北朝鮮に

 1959年12月から始まった「北朝鮮は地上の楽園」のキャンペーンで在日朝鮮人とその配偶者およそ9万3千人が帰還事業で北朝鮮に渡った。1984年10月までの25年間にわたってこの事業は続いた。

その後、90年代後半から2000年代前半にかけて飢餓との戦い「苦難の行軍」で300万人が生命を落としたと言われる。

更に、政府に批判的な言論や、不満を口にして収容所に送られたり、スパイ容疑で厳罰に処された者もいる。過酷な人権侵害に耐えきれず、少なくない帰還者や関係者が再び日本を目指すことになった。

 

 最初に訴えを起こしてすでに2年半が過ぎているが、ようやく入り口にたどり着く見通しになった、と原告側は記者会見で明らかにした。原告は粘り強く、北朝鮮の人権侵害に異議を唱える世界のNGOたちとの連携を強化し、実態を国連人権理事会や国際社会で訴え続けたのがようやく実を結んだ。

 

 

朝鮮総連を相手取った訴訟は門前払い

 これまで朝鮮総連を相手取った同種の提訴は、時効、証拠不十分などの理由により門前払いにされ、国家によって毀損された人権侵害の回復を訴える場がなかった。

 

原告の一人で東京在住の川崎栄子さん(79歳)と代理人の福田健治弁護士は、準備のために6回にわたり書面を提出した結果、「最初の口頭弁論が10月14日ころに行われる」と見通しを明らかにした。原告5人や専門家の尋問も認められそうだという。原告側が8月5日記者会見で明らかにした。

 

 

北朝鮮政府を相手取った裁判は異例

 原告は川崎栄子さんら1960~70年代に北朝鮮に渡り、2000年代に脱北した5人。訴訟では、北朝鮮が「地上の楽園」と宣伝し在日朝鮮人をだまして帰還事業に参加させ、抵抗すると政治犯収容所や電気や水道もない遠隔地に配置されるなど弾圧を受け、出国を許さないなど、基本的人権を抑圧したと主張、「帰還事業は北朝鮮による国家誘拐行為だった」と訴えている。

 

 北朝鮮政府を相手取った訴訟は異例。国際法には「国家には他国の裁判権が及ばない」とする「主権免除」の原則がある。元徴用工(元労働者)が「徴用工」問題で日本企業、日本国政府を被告として損害賠償請求を韓国の地方裁判所に求めたことと重なる。

 

 原告側は、2010年施行の「対外国民事裁判権法」の国会審議などで政府が「未承認国に裁判権免除を認める法的義務はなく、主権免除の対象外」と述べたことに着目。「日本が国家承認していない北朝鮮には裁判権が及ぶ」と主張しており、地裁の判断に注目している。

 

 東京地裁は18年の提訴以来6回、原告側と協議を重ねた。北朝鮮とは国交がなく、大使館など政府を正式に代表する機関も日本国内にはない。東京地裁は、訴状など関係書類の送付先がないことを前提に、裁判所の掲示板に書類を一定期間貼り出すことで被告側に届いたとみなす「公示送達」を行ったうえで、口頭弁論を開く方針とみられる。

 

北朝鮮政府宛の「公示送達」文書(裁判所掲示板)

 当基金は、金正恩国務委員会委員長の訴追に示した5人の元脱北者たちの勇気ある行動を支持し、最後まで支える立場は不動である。

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