COVID-19(コロナ感染症)の世界的な流行は、変異株の出現により世界的な不安、恐怖にさらされている。
しかし中朝国境の全面封鎖によってこの難局を乗り切ろうとする北朝鮮の実態は、よく分からない。だが、政治犯収容所は存続され、金正恩の独裁政治は続き、秘密警察である国家安全保衛部、政治保衛部が支える。移動の自由や通信の自由を監視し、基本的人権を圧迫し続ける。さらに貧弱な医療インフラが人々の生命の安全に圧力をかける。
人々は機会があればこの圧迫から逃れ自由の身になりたいと願うが、その希望が叶えられるのは一握りにも満たない人々である。
北朝鮮難民救援基金は、自由を求め解放されたいと願って、自力で自由な第三国に逃れたい人を誘導し、新たな定住地へと導いてきた。この希望を実現するためにはかなりの困難が伴う。それでも強い意志を持ち続けた強運の人が定住地への入国許可を得て、新しい人生をスタートさせている。
救援活動は再考、決断する時期
救援活動をする側からいえば、これまで基金は安全圏に誘導した200人を超える脱北者を、日本、韓国、アメリカ、カナダ、オーストラリアへと送った。
しかし近年の状況は、5年ほど前と比べると脱北者難民を取り巻く環境が、大きく変化している。
一つは中国社会のデジタル化によって国民の一挙手一投足を監視、統制することができるようになった。スマホによって発した情報は、当局が追跡できる。何時、誰が、どこで何を買ったか、交通切符や食堂での支払いまで把握される。
中国社会のデジタル監視制度は救援活動の追跡、捕捉に有効に働いている。と同時に世界的なコロナ感染の検閲強化のために必要不可欠との大義名分を提供している。通行の自由が制限されており、終息するまで救援活動は休止せざるを得ない。また救援活動を継続する新しい人材がなければ同様に停止する。今後二年のうちに最終決断を下す時期にある。
デジタル監視社会の壁
この状況下で、中朝国境の町から地方の大都市に移動するまで、いくつもの検問所を通過するのは不可能に近い。今では国道や検問所の近くの村へ通じる道にも監視カメラがある。
途中で病気になっても他人から借りた居民身分証では病院にも行けない。入力データは即座に不正使用を発見し、中国公安に通報されてしまう。直ちに強制送還となる。
私たちは中国政府のデジタル化技術と競って救援活動をできるだけの実力はない。対抗するのは旧式のアナログ的技術の駆使にある。
第2番目の障害はコロナ感染症対策の網
脱北者は、今はコロナ禍によっても通行の自由、移動の自由が束縛されているので自由への脱出は険しい。
中国の鉄道部門、感染拡大受け一部地域で北京への移動制限
デジタル監視社会下での脱北者難民の救援は、これまでとは比べ物にならない緻密な対応と、それらを支える資金とネットワークが求められる。
過去5年(2015-2020)の間に日本への定住に道を開いたのは2人しかいないという事実は、厳しい現実からすれば、NGOの活動の存在は無いに等しい。むしろ個人ベースの救援活動と言えなくはない。
それでも「助けて欲しい」との声の主がいるならば、当基金が活動を止めることはない、との声も根強い。北の故郷をすてて、命がけで自由を求めてくる人たちを救うために活動を始めた団体であるからだ。
それでも活動のために団体を維持するためには資金や協力者が欠かせない。
北朝鮮から日本を目指す脱北者は第3世代
また北朝鮮に渡った当時と今では、人間関係が希薄になっていることも理由に挙げられる。
日本政府が北朝鮮からの脱北者を受け入れるのは1959年から始まった帰国事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人と日本人配偶者の9万3千人の帰還者とその関係者が対象となっている。
既に60年を経過しているのだから当時0歳の子どもも62歳である。北朝鮮の過酷な社会でこの年齢の人が自力で脱北する体力も気力もないだろう。そうなればその人の子ども、あるいは孫たちが日本を目指すことになる。日本で身元引受人となる親兄弟、親戚は既に他界している例が多いので、頼って日本に来る道は細く険しい。
若い世代は一度も会ったことの無い親戚から援助の依頼を受けても、一族親戚の感情の絆がにわかによみがえるのも考えにくい。こうなれば日本を目指す脱北者は必然的に少なくなる。すでに日本を定住地として目指す人々の波は静まりかけているのかもしれない。
さらに2年間活動を続けても一人の定住者もなく、後継する会員がいない場合は、解散する道も現実的な選択となる。
朝鮮総連石川県本部に保存されているのが見つかった北朝鮮帰還者と日本人妻の名簿。上から名前、
朝鮮半島の本籍地、県内での住所、来日した年、北朝鮮帰還後の希望職業などが書いてある
Ⅱ 新年度に取り組む救援活動(通年)
① 脱北者の救援、安全確保活動
救援要請に即応する体制の維持と訓練、中朝国境情勢のフォロー、脱北ルートの調査、検討
救援グループの的確な能力評価
② 拉致被害者のマッピングと救援を模索
③ 救援スキルとしての韓国語、朝鮮語、 タイ語、中国語の要員の確保
Ⅲ 北朝鮮人権映画祭in 新潟
人権問題啓発イベントとして取り組む
Ⅳ Webを利用したセミナーの開催
大学生、高校生向けの講師派遣、担当者の育成
Ⅴ 国際機関との連携
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連人権理事会 (UNHRC)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)
Ⅵ NGOとの連携
北朝鮮脱北者・難民関係団体、アジアの人権団体との連携の研究
Ⅶ さやか奨学金の申請は随時受付
篤志家の寄金から始まった将来の希望を実現するための教育資金。給付型奨学金。
申請は随時受け付ける。主に高校生、専門学校生を対象に支給する。より高度の教育レベルの受給対象者の申請があった場合は、相応しい奨学金給付プログラムを紹介する。
編集部注)
第2号議案 財政報告、第4号議案 財政方針は、8月30日が経理の締めの関係で総会資料として別送することになります。第5号議案の役員案(理事・監事選出案)は別添になります。
事務局から会員の皆様へお知らせ
第24回総会はコロナ禍の為、通常の対面方式に併せて、ZOOMを利用したリモート方式も検討しています。リモート方式が可能となれば、追って利用方法もお知らせします。