ロシア極東沿海州ウラジオストックのアルチョム(Artyom)外国人収容所に北朝鮮人23人が収容されていましたが、そのうち2名の北朝鮮人漁師が難民認定申請をしていました。このほど仮釈放申請が認められ、3月末にUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)モスクワ事務所に身柄を移されました。
収監されていた2人の北朝鮮人漁民は一審の裁判で難民認定申請が不許可になり敗訴が決まっていましたが、判決を不服として控訴し二審の裁判が進行中でした。
※ロシア内務省沿海地方支局、ロシア連邦内務省アルチョム市市役所の(外国人一時収容所)看板
難民申請の真意、信憑性は?
私たちが支援を依頼していた担当のロシア人の弁護士によれば、二審の裁判でも難民の地位を獲得するのは難しいだろうとの見解を示していました。ロシア領海の侵犯、逮捕時点から「難民申請」の意思表示をしていれば、訴えの真正性を認めるが、かなりの時間が経過してから難民認定の申請をしても本人の申告の真意、信憑性が疑われてしまうのは当然と説明する。
「沿海州政府外国人収容法」を根拠に争う
そのため私たちの漁民の救援者グループは、弁護士と相談し、「難民の地位」の確定を争う裁判よりもロシア沿海州政府の外国人収容に関する法律に「外国人は、外国人収容所に24ヶ月以上収監できない」という条項があるので、これを根拠に釈放要求する方が現実的な解決法だとの結論に達したのです。
釈放させるには、まず身元保証をするロシア人を選択して身柄の釈放を申請する。次にUNHCRモスクワ事務所に難民認定の審査を要請し、直接難民の地位の判定を受けるとの手順で問題の解決に進む。そうすれば合法的に国連難民収容施設に収容される。
二審の裁判中の2人の漁民は、外国人収容所に収監されて、すでに1年10ヶ月を経ているので、「来月には釈放の可能性が高い」状況にありました。そこでただちに案件をUNHCRモスクワ事務所に連絡し、釈放のための法的手続きを取りました。同時に身元保証人を探し、難民申請できました。
「サハリン州政府外国人収容法」は、外国人を2年以上収監できないとの規定があるので、この規定を踏まえて行政審判を求め、釈放されました。UNHCRの指定代理人に伴われ空路モスクワに向かいました。しかし何でも順調に事が進んだわけではありません。
現在のモスクワのコロナ感染状況からUNHCRの難民キャンプに直ちに収容はできないので、UNHCRモスクワ事務所が準備した収容隔離施設にしばらく待機ということになりました。
2年前までは23人でしたが、現在はアルチョム外国人収容所に収監中の北朝鮮人は9名です。ロシアに合法的な就労ビザで入国し、木材伐採工、建築工として外貨稼ぎの人々ですが、滞在期間が過ぎて不法就労、不法滞在になっています。外貨稼ぎの身分を獲得するために北朝鮮で賄賂によって外貨稼ぎのチャンスを得ているのですから、派遣事業体にノルマ分を支払わなければならないのです。1ルーブルでも稼ぎたいという重圧と酷寒でも耐えて働く道を選択しているのです。
<編集部注>
ウラジオストックのアルチョム外国人収容施設の北朝鮮人たちすべてが、難民認定を望んでいるとは言えません。24ヶ月以内に身元引受人が無い場合は、本国に強制送還となります。
戻れば誰が難民申請をしたか、首謀者は誰かなど国家安全保衛部の取り調べがあり、北朝鮮に残っ た親族、関係者に厳しい取り調べと監視がつきます。
編集部は人権人道上の配慮から個人が特定されるのを回避する工夫をして、救援ネットワークの活動を、国際救援チームからの連絡を受けてお知らせしています。救援活動を支える資金として、募金の提供、協力があれば感謝します。
なお、12ページに関連記事も掲載しています!
募金振込先:口座名 (特非)北朝鮮難民救援基金
・郵便振替口座番号: 00160-7-116613
・ゆうちょ銀行 店番号 019 (当)0116613
・みずほ銀行本郷支店 (普)2489718
・三菱UFJ銀行本郷支店 (普)0111900
救援ネットワークから支援の報告を写真とともに寄せてきました!
ウラジオストクで収容されていた北朝鮮人2人、無事モスクワに到着しました。皆さんからご支援頂いた募金が大いに助けになりました。北朝鮮難民救援基金からの支援金は、アルチョム外国人収容所にまだ収容されている北朝鮮人の服と靴、そして食料品と生活必需品を購入して供与しました。
今後も継続的にこの外国人収容所の北朝鮮人に対する関心をもち、継続してモニタリングをしてゆく予定です。