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内閣総理大臣 小泉純一郎 殿 北朝鮮難民の定住化促進に関する提言

 11月12日、首相官邸で加藤事務局長らは安倍晋三官房副長官に会い、面談した。その際、2001年から日本に定住している北朝鮮難民が基金にあてた手紙と下記の提言書を渡した。今後さらに増えてくる北朝鮮から脱出してくる日本人妻とその家族、元帰国者とその家族、そしてそれ以外の北朝鮮難民たちの定住に対する対策は緊急の課題になると思われる。 

(編集部)

 

 北朝鮮難民救援基金は、「一人でも多くの北朝鮮難民を救おう」を合い言葉に、1998年の創立以来、食糧、衣類、医薬品などを真に必要な人々に配給し救援活動を続けているNGOです。私たちは会員数わずか200名足らずの小さな団体ではありますが、現在の援助活動の規模は、米の援助換算で月間5トンにのぼります。

  また私たちの援助活動の過程で、第3国に定住を希望し、北朝鮮の脱出に成功した北朝鮮難民は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で難民認定を受け、あるいは当該国の受け入れを通じて韓国や日本に定住を果たしてきました。その数は、およそ80名を超します。

 北朝鮮難民救援基金が救援した大部分の難民は、韓国を定住の地を選んでいます。私たちは彼らの適応能力や意志を尊重して定住地を推薦しますが、結果的に圧倒的多数の北朝鮮難民が韓国を選ぶことになります。

 その中には、少なくない数の日本生れの在日朝鮮人や日本人配偶者との間に生まれた子弟が含まれています。これらの日本で生まれ育った人々は故郷が日本と考えています。生まれ育った日本で死にたいと最後の望みを語る人々もいます。それでも泣く泣く、縁もゆかりも無い土地、友人も親戚もいない韓国を定住の地に選ばなければならない苦しい選択をしている人々もいます。

 理由は韓国が、定住するための適応プログラムや住居、生活資金の手当てなどの韓国社会への受け入れの仕組みが整っているためです。日本は受け入れの体制が無いために、最終的には日本への定住を断念せざるを得ません。

 現在、北朝鮮国内での差別や迫害、苦境から逃れて中国に脱出してくる元在日朝鮮人や日本人配偶者の子弟の姿が中国の東北3省で目立つようになりました。彼らが父母の地・日本に帰って普通の生活を望んでも、言葉の問題、就労、子弟の教育などで並々ならぬ苦労をしています。すでに、私たちが関与して日本への帰国を実現した20名ほどの人々は、何らの保護も援助も受けられず日々の生活と苦闘しています。弱小NGOが問題を解決できる限界を超えつつあります。そしてその数は確実に増えています。

  今後北朝鮮をめぐる状況は、国家体制崩壊の可能性を否定できず大量の難民の発生、国外脱出が考えられます。その中には当然、1960年代の北朝鮮への帰国運動で北朝鮮に渡ったおよそ9万3千人にのぼる人々の子孫、日本人配偶者やその子弟が難民となって流出することが考えられます。

 北朝鮮難民救援基金は、日本政府が北朝鮮難民の保護、受け入れに以下の点を勘案し、立法化など必要な措置を取る事を求めます。

 

1.中国に流入する北朝鮮難民の保護、定住問題を解決するために国際的な枠組みをつくるイニシアチブを発揮して下さい。

 

2.北朝鮮難民で日本で生まれ育った在日朝鮮人と日本人配偶者、その子弟の定住を優先的に受け入れて下さい。

 

3.定住を助けるために、日本語教育、必要な学校教育、職業訓練、就職の斡旋、公営住宅への優先配分など定住化促進のプログラムの策定と体制整備をして下さい。

 

4.北朝鮮から脱出し難民となって日本に定住した場合、当人たちの身の安全が保障される対策を講じて下さい。

 

5.北朝鮮に残された親族の生命の安全を考慮した安全対策と保護対策を確立して下さい。

 

   北朝鮮難民救援基金

   事務局長 加藤博

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