2023年10月から、ミャンマー少数民族による政府軍への攻撃が激しくなっている。ミャンマーでは軍事クーデター以降、政府軍がクーデターに反対する少数民族側に対する攻撃を繰り返してきたのに対して、いわば少数民族側が反転攻勢を試みているという構造である。
少数民族ではないものの、都市部から軍事政権の弾圧から逃れて、反政府活動に転じた多くの市民が、人民防衛隊(People Defense Force)として少数民族の軍事組織によって訓練を受け後、政府軍への攻撃に加わっている点が、これまでミャンマー国内での戦闘との大きな違いである。
特に、ミャンマー東北部のシャン州、カヤー州などでの戦闘が激しさを増しており、その影響で、多くの避難民がミャンマー国内の山間部、あるいはタイとの国境を越えた山間部に、一時避難所(シェルター)を作って身を寄せている。その数は、はっきりしないが、10万人は超えるとみられている。
都市部から隔絶した山間部にあるシェルターのために、現状ははっきりしない。タイ政府としても、これ以上、ミャンマーからの避難民が拡大しないように、シェルターの支援はするものの、一方で、ミャンマー国内に帰還するように勧めている。そのため国際社会からの支援も、シェルターへの直接の支援は禁じられ、タイ政府や赤十字を通じた支援に限定しているのが実態である。
しかしながら、現地からは、シェルターの環境の劣悪さを改善することに対する国際的な支援を求める声が届いている。主に、食料、医薬品、衣料や日用品が足りないとのことである。特に、12月から2月ころまでは、山間部は大変冷え込むので、防寒具のニーズが高いという。
こうした現状から、北朝鮮難民救援基金にも現地の協力者よりミャンマー難民シェルターについての情報が寄せられた。これを会員の皆さんと共有することが大切だと考えるので、下記のように掲載する。
1.KNPP(カレンニー民族進歩党)からの情報
チェンマイのKNPPの関係筋より避難民支援の現状に関する情報を得た。
KNPP傘下の緊急支援カレンニー協力隊『The Coordination Team for Emergenc
y Relief(Karenni)』/ CTERで、主に支援資金集めや物資集めを行っている。
2. 内国避難民キャンプ(IDC)の状況
カヤー州側の内国避難民キャンプ(IDC)は、概略以下のような状況である。
ミャンマーのクーデターと戦闘発生以来、タイ軍の国境管理が非常に厳しくなっていて、越境は以前のように簡単ではない。しかしKNPP傘下の人道支援部門の方を通じて手配することで、可能である。
メーホンソンのナイ・ソーイ(Nai Soi)から越境し日帰りできる地点にもIDCがある。
アクセスは悪路だが寒季に入ればかなり楽になる。バイクと徒歩で向かう。
物資支援は、大口の支援であればCTERを通す形がいいが、小口であればより小回りが利く Karenni IDPs Fundraising Groupか Karenni Human Rights Group を通す形で望ましい。
3. 関連情報
カヤー州内での戦闘は、中央部で激しいが、東のタイ国境付近は比較的安定している。タイ国境近くに戦闘が拡大することにはタイ軍がミャンマー側に懸念を表明している。
そのため、カヤー州のタイ国境近くにいくつものIDCがある。IDCの実数は、人の避難状況により場所が移動したり閉鎖・合併したりするため、確たることは言えない。
カヤー州南東部のクンユアム~メーサリアンとの国境周辺に、現在9か所のIDCがある。
タイ当局はタイ側シェルターの避難民に対して、帰れるなら出来るだけミャンマーに戻るようプレッシャーをかけている。最近、それにより約3000人前後がミャンマー側に帰った。