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UNHCRは北朝鮮難民の認定・保護活動を推進するべき責任がある

11月27日の国際共同記者会見の結果をうけて、12月11日にキム・サンホン、TA・ピーターズ、当基金より加藤博の三人がUNHCR日本・韓国地域事務所(在東京)を訪れ、カシディス・ロチャナゴン代表に以下の要請を行い、話し合いがもたれた。中国政府は難民に関するほとんどの国際的協約に批准しているにもかかわらず、北朝鮮難民に関しては意図的に遵守せず、UNHCR北京事務所の活動を妨害しつづけている。一方、UNHCR側はそれを口実にほとんど活動を起こしていない。これが北朝鮮難民をいっそう悲惨な状況に追いやっている。この会談はこの状況を打開する道筋を見つけるためにもたれたものである。以下はその時の要請文である。

(編集部)

 

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)日本 東京事務所 御中

 

拝啓

 特に今のこの時期に、新たに再認識すべきことがあります。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の任務は、難民保護および難民が抱える諸問題解決を推進することです。中国にいる北朝鮮難民を援助する為に、私共は長年にわたりボランティア活動を続けて参りましたが、UNHCRが、この件に関して、託された権限を情けないほど不十分にしか行使していないという事実を申し上げなければならないことに心痛みます。

 貴東京事務所に対するいやがらせが目的で、このような評価を申し上げているのではありません。私共の唯一の関心は、北朝鮮の人々が、必死に求めている保護を実現することです。この保護は、彼等の正当な要求であります。彼等を難民として認定する作業を粛々と進めて頂きたいのです。UNHCRのご活動、もしくは活動不足への私共の評価は、下記に基づきます。

 

1. UNHCRは、彼等の国際的保護の必要性を認めているにも拘わらず、保護に失敗しています。

2. 中国国内の北朝鮮人民への接触ができない理由として、UNHCRは、中国政府が難民との接触や、難民のいる場所への立入りを拒むことを理由にあげています。UNHCR自身の職務怠慢の為に、中国政府が非難されています。しかし、1995年の中国とUNHCRとの合意書の中に、UNHCRの職員は、いつでも、中国国内で、難民と自由に接触できる権利を有すると書かれています。遺憾ながら、この件に関して、UNHCRが、中国政府に対してこの明確な権利を主張したとする記録は一切ありません。この消極的姿勢が、今なお続く法外な規模の人々の悲劇の背景にあります。

3. 1995年の合意書では、難民支援は関連する国連決議に基づいて行われることも規定されています。本年8月の国連決議2002/27号では、「貧困並びに窮乏」による逃亡に関しても、難民認定がされることを明確に規定しています。

 中国によって主張され続けてきた、中国国内の北朝鮮人民はすべて「経済難民」でしかないという主張に、この画期的な国連決議が明確かつ大きな役割を果たします。もう一度申し上げますが、中国が繰り返す「経済難民」であるという主張に、UNHCRが、この国連決議を有効に使おうとした形跡は全くありません。

 このように、中国政府の国際法違反は明瞭です。また、中国政府を国際法に従わせる上で、UNHCRはこれを遂行できる立場にあることも明白です。7年前に中国とUNHCRとの間で調印された相互合意書の中にこそ、中国政府を従わせる有効な方法があることを信じております。合意書によると、UNHCRが、中国国内難民と、いかなる時でも、妨げられることなく接触する権利を有するとあります。また、合意書は、UNHCRと中国との間に意見の不一致があった場合には、これを調停裁判に持ち込むことができることを定めています。この調停裁判には、国際難民法を適用できるのです。

 上記のような理由から、UNHCRに対して私共がお願いしたいことは、UNHCRが、その機能や権限を十分に発揮して、今も続けられている、北朝鮮難民や、人道的立場から彼等を支援している方々の逮捕を、拘束力のある調停手続きに着手することにより止めさせて頂きたいということです。UNHCRが自らに託された権限を本格的に発動させる上で、一体これ以上、何が起こる必要があるのか、私共は正確に知りたいのです。

 また、是非お願いしたいことがあります。これまで私たちは事あるごとに中国当局に対して回答を求め続けてきた下記の質問がありますが、今現在に至るも未だ中国当局より何らの回答もありません。これらの重要な質問に対する中国側の回答を是非引出すようにして頂くことを、切にお願い申し上げます。

 

1.中国における脱北者の身分は、国内法あるいは国際法のいずれによるべきなのでしょうか?

 難民の地位に関する事柄は国際的事項であり、従って、国際法によって裁定されるべき事柄であり、(例: 1951年の難民の地位に関する条約、1967年の同様の議定書)中国国内法や、政治的、経済的思惑によって裁定される事柄ではないと、私共は確信しております。

 更に、貴中国政府は、人権に関する国際的合意を国内法の下で拘束力があるものとして受け入れており、中国は国際的な人権に関する合意に関わる義務を遵守しなければならないことを認めております。国内法と人権に関する国際的合意との間に不一致が起こった場合には、人権に関する国際的合意が優先されねばなりません(Report of China - HRI/CORE/1/Add.21/Rev.2, 11 June 2001)。

2.脱北者が、難民として認定されることを立証する権利まで否定される根拠は何なのかを教えて下さい。

 慙愧にたえないことですが、中国政府は、元来、国際法によって決裁されなければならない国際的事項に国内法を適用しています。何故、慣習的国際法に基づいて、脱北者を難民として認定できないのかを、最初に説明すべきです。この説明をせず、公正で有効な保護手続きもせずに、脱北者を逮捕する中国政府は、極めて専横で、人権と人国際的正義を踏みにじっているように思われます。基本的な人権と人道の名において、国際社会は中国政府に対し、何故、脱北者を難民として認定できないのか、公に明確にするよう要求する権利があります。

3.中国政府の、脱北者に対する「不法入国」という罪状に正当性はあるのでしょうか?

 正当かつ有効な庇護手続きを取らずに、中国政府は、すべての脱北者を不法入国者及び違法滞在者として摘発しています。これは、1951年の合意書の第31条、難民に不法入国者及び違法滞在者として処罰することを禁じた条項に違反していることを如実に示しています。従って、不法入国は、脱北者達が、当然の権利として要求できる難民認定の権利を妨げません。不法入国のような必死の行為に対しては、難民を難民として保護する為に定められた、国際的難民条約に従って、難民認定の審査を受ける権利が適用されるべきです。(法的には、ここで問題にしている脱北者は、当初の段階では、違法越境者ということになります。本質的に、中国のように、脱国者が、不法入国及び違法滞在という理由でのみ無条件に逮捕されるようなら、およそこの世の中のどこにも、難民というような概念は存在しないことになります。)

4.不法入国者を、人道的立場から援護する救援者達に刑罰を科する中国政府は、如何にして、それを正当化できるというのでしょうか?

  あらゆる政府は、その主権によって不法移民を処遇する権利を有します。しかし、中国政府は、不法移民とみずから決め付ける人々のみでなく、これらの人達を人道的立場から救援しようとする人々にまで、刑罰を科しています。このような無分別な行為は、良識ある国際社会の一員としての一般的な基準からはかけ離れたものであります。こういう行為を行うことによって、中国政府は無辜の市民や、国際的救援グループの人々の、困窮の極みにある人の為に何かをするという、基本的人権を蹂躪していませんか。中国語でいう人道とは、世界の他の国々とは、かけ離れた意味を持つのでしょうか。

5.脱北者は経済移民であり、従って、難民ではないのですか?

 私達が入手した大量の情報によりますと、脱北者の誰も、事業を起そうとか、高給を得ようなどとはしていません。通常、移民は移民元の国からの保護を享受していますが、脱北者はそうではありません。

このことをより際立たせる皮肉なことがあります。中国から第三国へと亡命しようとした多くの脱北者達が逮捕されてきているということです。我々は疑問を呈せざるを得ません。もし、脱北者が中国で事業を起そうとか、高給を得ようなどという目的で不法入国する経済移民たちなら、中国よりも経済的利得を得る機会が更に少ない第三国(蒙古、ミャンマー、ラオス等)へと、必死の逃避行を何故試みるのでしょうか。中国政府が主張するように、脱北者の脱北の動機が経済的目的だとすれば、彼等は中国からの脱出を決して試みないでしょう。彼等が目指すのは自由であることは明白です。

 この点に関する最近の事例があります。18人の北朝鮮人が、2002年11月13日に、中国内のベトナム国境にほど近い所で、中国当局により逮捕されました。このグループの中には、生後7ケ月の乳児や、4歳の子供が含まれていました。彼等は、中国の広西壮族自治区の南寧市に留置されていると思われます。もし彼等が、真に経済難民なら、何故、一刻も早く必死になって中国から脱出しようとするのでしょうか。

 私共が、大変な注意を要するやっかいな多くの問題を持ち込んだことは充分に認識しております。もう一度言わせて下さい。もし、これらの事柄が、本質的に学術的な事柄であったならば、私共は、こんなに熱をいれて、この声明文を提出したりなどはしなかったでしょう。しかし、ご案内の通り、これは、数十万人のほどではないかもしれませんが、少なくとも何千人もの北朝鮮の人々の生死に関わる重大事です。その故に、唯それだけのゆえに、私共は、北朝鮮難民の人々に代わって、UNHCRの最高レベルの緊急行動を切に願うものであります。

ご返答を、鶴首してお待ち申し上げております。          

 

敬具

          12月11日

 

*中平健吉

北朝鮮難民救援基金代表

 

*TA Peters (TA・ピーターズ)

Helping Hands Korea(ヘルピング・ハンズ・コリア)代表

 

*San Hun Kim(サン・ホン・キム)

International Human Rights Volunteer(国際人権ボランティア)

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