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朝鮮半島有事事態と難民問題①

米トランプ政権は、北朝鮮の「核・ミサイル開発阻止」と世界最悪の「人権状況の転換」を目 指し体制変換も辞さぬ強硬な態度だ。こうした北東アジア情勢の緊張を受け、北朝鮮難民救援基 金は「朝鮮有事事態と難民問題」をテーマに連続講演会を企画した。第1回目は7月1日、東京・ 芝大門の人権啓発推進センターに中川正春・民進党衆議院議員、坂中英徳・移民政策研究所長、石川エリ・難民支援協会代表の3人を招き「難民問題の対応策」などをお話頂きました。

 

中川氏:難民受け入れの法的枠組み作りを

中川氏が冒頭「北朝鮮有事で想定される東アジア、日本への影響」と題して基調報告を行った。氏は韓国の黄祐呂(ファン・ウヨ) 前国会議員と「北朝鮮難民と人道問題に関する国際議員連盟」を立ち上げるなど豊富な外 交経験を下に、朝鮮有事については「問題は 時間との競争だ。専門家は『ここ2年間で核 弾頭の小型化、ミサイル ICBM は大陸まで届く であろう』と言う。それまでに決着しないと いけない。政権も追い詰めると混乱が起き、 武力攻撃が起きなくても難民流出につながり、 コントロールが効かなくなる」と憂慮した。 氏はまた「帰国運動で北朝鮮に渡った子供ま で含めて在日帰国者(約 10 万人規模、政府予 測は数万人)が日本に帰ってくるので、日本 が受け入れるべき」と述べた。難民対策の要 については「危機対応だ。誰が何をするのか、 大量難民受入れの法律の枠組み造りが大事 だ」と述べ「大混乱にも対応できるよう国民 のコンセンサスを作るべき」と指摘。

 

加藤氏:危機対応で国民のコンセンサスが重要

これを受けて当北朝鮮難民救援基金の加藤博理事長は「有事とはどういうものか初歩的なことから1つ1つ確認が必要。有事になったといって大量の難民流出が突発的に起きると考えるよりも、一定の期間をかけて出てく る。危機対応についてレベル1、2、3と段 階ごとに対応でコンセンサスが必要。問題提 起をしないといけない。北には多い結核など 伝染病のパンデミック(大量感染)問題にも 対応方針を作らないといけない」と強調した。

 

坂中氏:9万3千人の在日帰国者受け入れを

この後、坂中氏が「朝鮮有事で想定される 難民問題の現実」と題して講演。坂中氏は昭和57年、1982年に施行された「出入国管理 及び難民認定法」作成当事者のお一人で、クリントン政権時に発生した朝鮮有事事態での 「難民流出事態対応」の立案担当者でもあっ た。氏は「北朝鮮は終わりに近い。体制崩壊 で難民は出てくる。しかし、金正恩体制下で 全部出てくると考えるのはおかしい。普通の 人々は中国や韓国、ロシアに行くが、北に渡 った在日帰国者(9万3千人)は何十年に亘 って迫害を受けてきた。日本が受け入れるべ きだ。その中の 6800 人といわれた日本国籍所 有者は何が何でも日本に帰ってくる」との考 えを示した。

 

石川氏:移民国家目指し対話と日本語教育が大事

この後、加藤理事長と難民支援協会の石川エリ代表の間で「討論会」が行われた。登壇した石川氏は、昨年も700人、66 カ国の人々を支援している豊富な経験を基に「来日翌日から、読めないアラビア語の母子手帳、BCG などの接種記録の判読、誰が翻訳・通訳する のか。日本には、ゆかりの無い人々を受入れ て行く土壌が無い。保育園、幼稚園、小学校、地域と近所付き合いにコミュニケーションが 大事で、無いとつながらない。移民国家にな るべきだ。最低限のインフラ、仕組みを整え ないと難しい。行政との連携や日本語教育を インフラ化することが重要。理想形がないと思っていたが多文化共生課を擁する市役所もある。投資が必要。通訳不足が課題になっていると思います」と見解を述べた。

(文責:佐伯浩明)

 

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