読書紹介 『「ただいま」も言えない「おかえり」も言えない』           

 

 (特定失踪者家族会編 高木書房刊)                        

                                 加藤 博

 

 「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者の家族有志の会」(略称「特定失踪者家族会」)は、2017年に設立された。2020年1月末時点では68家族74人が加わり、肉親の消息を探している。結果の出ない特定失踪者の救出には、希望の光が必要だ。

 これまで積み上げてきた努力は、国内はもちろん国際的なアピールまで手を広げた。国際刑事裁判所へのアピールも試みたが、事件がICC(国際刑事裁判所)設立以前であることから、提訴の受付はならなかった。拉致事件は未解決のまま現在進行形なのである。

 本書は拉致被害者全員を網羅しているわけではないが、調査会が自力で収集し到達した内容を公表している。

 2003年1月に特定失踪者問題調査会が設立され、「拉致濃厚」と認められ、発表されたケースが網羅されている。そのほか政府認定拉致被害者、救う会認定被害者は写真が掲載されている。「警察発表」とあるのは「拉致の可能性を排除できない失踪者」として公開しているが、警察のホームページには写真があるが、転載を認められないために本書には写真がない。また本書に掲載されていない拉致被害者もいる。親族が公表を望まないケースでそれ以外に警察にも調査、会にも届を出されていない例が相当数あると言われている。

 さらに在日朝鮮人拉致被害者の場合、親族訪問や総連の事業で北朝鮮に出張したまま戻れなくなってしまった例も多い。こうした場合警察にも特定失踪者問題調査会にも家族が問合せをしていないまま闇の中に埋もれている場合が少なからずある。北朝鮮にいると分かっても「人質」となり、また日本国籍でないために、日本政府の保護を受けられないという「壁」もある。誰も救援する手を伸べないのか。その答えが欲しい。2014年朝鮮民主主義人民共和国の人権侵害に関する国連調査委員会(COI)が国連人権理事会に提出した「北朝鮮における人権調査報告書」は2015年の国連総会で決議されている。報告書は北朝鮮の人権侵害について「深刻で、広範囲で、組織的におこなわれている

」と北朝鮮の「人道に対する罪」と断じている。

 拉致被害者や家族の心情や苦悩を察することはできるが、痛み、苦しみまで共有するのは難しい。この本に登場する人々の写真と簡単な説明からでも声なき訴えは、聞くことができる。ぜひ多くの人に読んでいただけるように、地域の図書館に購入を請求し、一人でも多くの読者の目に触れていただけるよう皆様のご協力をおねがいします。

 1冊1500円(税別)です。書店でも調査会直接でも購入できます。

Email:comjansite2003@cyousa-kai.jp

    Tel:03-5684-5058

    Fax:03-5684-5059

 

 

 

 

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