【News114】−寄稿−  武漢肺炎(COVID 19)と 第21代総選挙による脱北者の心境変化

元小児科病院院長 元脱北者 李泰炅

 

 韓国に定住した元脱北者たちは、文在寅政権の政治に対して不満を持ちながらも韓国への定住につ

いて肯定的な面も見せているが、それよりも目の前の利益や買収にあまりにも敏感なので、将来の見

通しや幸せについて考えるのは疎いようだ。以下は小児科病院の元院長の嘆きの呟きである。

(編集部)

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 2019年12月24日、日本の衆議院議員会館で開かれた『在日僑胞北送の悲劇60年』記者会見で北送の真実と北朝鮮と朝鮮総連の悪行を知らせたのは、北朝鮮の民主化のための一助に貢献していると考える。

 私は脱北するときから、北朝鮮の民主化と北朝鮮国民の人権回復のために僅かでも寄与したいと考えていた。こうした考えで2020年の新年を迎え、新たに決心して活動計画を構想した。

しかし、予期できなかった武漢肺炎(COVID19)と第21代国会議員総選挙の結果は、私たち

にいま一度現実を振り返る契機になった。

 武漢肺炎(COVID 19)は右派団体にはブレーキとなり、国会議員総選挙に大きな影響を及ぼした。コロナウイルス感染患者は全世界に3,959,364人(2020年5月10日午前9時基準)で、うち277,845人が死亡した。韓国では2020年1月19日に最初の確定患者が発生し、現在までに10,800人の確診者と250人余の死亡者が出た。COVID 19ウイルスは2019年12月に中国で発生したにもかかわらず、韓国では公営放送が先頭に立って宗教団体の「新天地」が発源地感染源であるかのように政治問題化させた。

 常識的に伝染病の基本は防疫伝染病が確認された瞬間、治療とともに病原体がさらに広がらないように全力を尽くさなければならない。ウイルスの拡散を防ぐには、先ず伝染経路を遮断してワクチンと治療薬を開発することが伝染病の防疫と治療対策だ。このとき、ウイルスの拡散防止と治療は医療専門家たちが担当しなければならない問題であり、政府は彼らの意見に従い、防疫と治療がよくなされるようにしなければならない。政府が専門家の意見、主張に口を挟んだり、無視してはいけない。

 しかし韓国政府は着実に増えるCOVID 19に対して、伝染病の発生源である中国から入ってくる旅行客を遮断しないまま空港検査と隔離に終始した。「新天地」という宗教団体の内部悪行に矛先を転じた。これは、現在の大韓民国政府の典型的な親中外交を示した極端な例になった。

 コロナウイルスの蔓延で右派団体の活動は停止され、先月行われた国会議員総選挙にも多くの影響を及ぼした。COVID 19によって一般市民は社会的距離を確保しなければならず、集いが禁止され、食堂の廃業で意思疎通の場が制限された。これに対し大統領府の考えは公営放送を通じてそのまま全国に放送された。会社の仕事に忙しい人々とデジタル機器にうとい老年層は真実を語るユーチューブのような右派の放送を聞けないまま、公営3社の放送に洗脳されていた。

 簡単に言えば、政府与党の宣伝は左派に占められた放送電波によって全国・全世界に広がったが、保守陣営の活動は手足が縛られていた。

 コロナウイルスによる右派団体活動の制限は国民の判断力を麻痺させ、政府与党(左派政府)は能力ある政府と国民に評価され、総選挙に大きい影響を及ぼすこととなった。

 結果的に、4月15日に行われた第21代国会議員総選挙で左派与党の「共に民主党」は全体議席の60%を獲得し、野党の「未来統合党」はかつてなかった34%というみじめな結果を得るしかなかった。

 どの党に投票した、理由はと尋ねる私は懇意にしている脱北知人たちに電話をして「どの党に票を入れましたか?」「その党を選んだ理由は何ですか?」と尋ね、彼らの動向が分かった。そのうちのいくつかを紹介する。

 

●イヨン、 86歳、女性

『短い投票用紙は2番を、長い投票用紙は4番にしようとしたが、長い用紙に1番と2番がなくて4番目の欄にチェックしたが、良かったのかどうか分からないね。何でそんなに複雑なのか分からないよ。』

 未来統合党を推すために国会議員選挙区候補者は2番、比例党は4番にしようとしたのに、実際に投票所へ行ってみると比例代表を選出する党投票用紙には1番と2番がなかったとのことだ。それで上から4番目の欄をチェックしたが、比例党投票用紙の4番目の欄は左派政党である「正義党」だった。連動型比例選挙制は一般人には理解しがたい難解で複雑な投票制度であり、比例党投票用紙から1番と2番を抜いてしまうことで多くの投票者を混乱させ、意図しない党に投票することになった。

 

●ヤンギョン、60歳、男性 

『私は共に民主党に投票しました。後はどうなるか知れないが、今はお金を多くくれるのだ

から良いです!』

 現大韓民国政府は緊急災難支援金として1人世帯40万ウォン、2人世帯60万ウォン、3人世帯80万ウォン、4人世帯以上は100万ウォンを与える、と選挙直前に公表した。今直ぐに利益を与えるという大統領の買収を支持するということだ。

 これは北朝鮮の金日成が、8.15解放混乱の時期であった1946年3月5日に「無償没収、無償分配」を原則にした土地改革を断行して地主の土地を奪って農民に分配したのと似ている。土地改革は結局、金日成に「偉大な首領」または「将軍」という称賛をもたらした。文在寅が「人が先だ」「弱者のための国」「聞いたことも見たことも、体験したこともない国」を作るとして経済が破綻し、国債まで発行してお金を分け与えるのは、あたかも北朝鮮の「土地改革」を見るようだ。

「弱者のための国を創る」という公約を守るために最低賃金を上げ、それによって多くの店がぞろぞろと門を閉め、商品の価格が天井知らずに上がるのは見逃せないはずなのに。

 

●ジョンスン、 64歳、女性.

『誰がなろうがなるまいが、投票が騒々しくて行きませんでした。今回のコロナ対策を見ると文在寅はうまくやっているようですね。韓国が世界的にコロナ拡散防止の手本になっていると言うんですよ。そのうえ、お金をくれるのですから良いですね。』

私:『どんなTVを見ますか? ユーチューブを見ますか?』

答:『ユーチューブは見方が分からないので、KBS1、 KBS2、 MBC、 SBSテレビを見ます。』

韓国の公営TVは政治的中立性を守らず、偏頗的な放送は「群衆効果」を起こす事実を示唆している。

 

●カンデ、 79歳、男性

『当然、統合党だよ。なぜかって? 文在寅の統一政策は北朝鮮主導の統一なので、それが一番危険だ。金正恩は絶対に赤化統一の夢を捨てないだろう。それは私たちが北の体制で暮らして知っている。ところが多くの脱北者は共に民主党を選択したというね…』

 

 金正恩が変わらないということを知っており、安保に関心が高い人だ。私は李明博時代に入国して、10年間大韓民国で生活しながら朴槿恵政府、弾劾、ろうそくデモ、文在寅就任、COVID 19と第21代国会議員総選挙を経験した。10年の韓国生活をする間に北朝鮮が核を保有する過程とミサイル試験発射による韓半島と世界情勢、自由民主主義と社会主義の葛藤、朴槿恵大統領の弾劾過程とその黒幕、逆に回る左派政府の樹立とトゥルキングと曺國前法務部長官の黒幕、コロナウイルスと第21代国会議員総選挙の過程と疑惑など、話そうとすれば終わりがない事件も体験した。

 ところで私にはまだ解けない疑問が多い。どうして大韓民国では国家元首であり、政府の首班であり、国民の代表である朴大統領が弾劾という厳重な事態にまでなったのか。文在寅が本当に中国を「真の隣人」と呼ぶならば、逆に中国と経済戦争をしているアメリカは「真の隣人」でないということか。

 反日を主張する理由は何か。韓米日同盟を否認して親中、親北をするための暗示なのか。現政府が話す「平和統一」とは北朝鮮による社会主義統一か。大韓民国主導の自由民主主義統一を意味するのか。

コロナ事態で生じた時間が、数多くの疑問と現実を分析する時間になることを願う。

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